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ビジネスを革新するエスノグラフィー

ビジネスを革新するエスノグラフィー

エスノグラフィーとは何か

エスノグラフィーとは、文化人類学や民族学の分野で用いられてきた研究手法です。

特定の文化集団の生活様式、価値観、社会構造、信仰、伝統、技術といったあらゆる側面を、できる限り客観的かつ網羅的に記述し、分析し、理解することを目的としています。

ビジネスの領域においては、調査員が観察対象者の日常環境に身を置き、行動を共にすることで、対象者を深く理解しようとする定性調査の一種として定義されます。

これは単なる行動の記録に留まらず、行動の背景にある文化的文脈や、対象者自身も意識していない無意識の行動様式を深く探求することを目指します

エスノグラフィーのビジネス価値

エスノグラフィーの最も重要な価値の一つは、言語化できない潜在意識やインサイト、すなわち「暗黙知」を発見する能力にあります 。

アンケート調査では、言葉で表現できる「形式知」は収集可能ですが、無意識の行動や習慣に根ざした「暗黙知」を把握することは困難です。

エスノグラフィーは、直接的な観察を通じて、このような暗黙知や、現場で無意識に行われている習慣を理解することを可能にします。

この深い理解は、新商品や新サービスの開発、あるいは既存製品の改善において、他の調査手法では見つけられない革新的なヒントをもたらします 。

対象者が抱える課題や不満が、彼ら自身によって言語化されていない場合でも、その行動や環境から読み解くことで、真に価値のある解決策を導き出すことができるのです。

エスノグラフィーは、現場内部で直接観察を行い、時にはインタビューを通じて対象者の意見を吸い上げることで、企業内の誤った認識を防ぐ効果があります 。

対象者の予想外の行動や発言に触れることで、思いがけない理由や動機が明らかになり、企業は既存の固定観念に囚われずに新しい視点を取り入れることができます。

これにより、より客観的な意思決定が可能となり、市場の変化に柔軟に対応できる企業文化の醸成にも寄与します。

エスノグラフィーで潜在ニーズ発掘

エスノグラフィーは、「未解決の不満」や「工夫」から生まれるイノベーションの源泉となります。

例えば、調査を通じて、ユーザーが製品やサービスのデメリットを解消するために「自分なりの方法で改良」していたり、既存の製品を「他のものと組み合わせて使えるようにしている」場合を発見できることがあります 。

加えて、売り手が想定していなかった用途で商品が使われている事例も存在します。

例えば、衣料用消臭スプレーとして販売されたファブリーズが部屋の臭いを気にする人に使われたり、工事用マスキングテープがアート目的で使われたり、乳幼児用おむつが高齢者に使われたりするケースが挙げられます 。

これらの「改良」「組み合わせ」「想定外の利用」は、既存の製品やサービスが満たせていない顧客の「未解決の不満」や「潜在的なニーズ」の明確な表れです。

エスノグラフィーは、顧客が自ら行っている「工夫」や「ハック」を観察することで、企業がこれまで気づかなかった新たな市場機会や、既存製品の画期的な改善点、さらには全く新しいビジネスモデルのヒントを発見する「イノベーションの源泉」となります。

これは、顧客が「不便」と感じながらも「諦めて」行っている行動の中に、次世代のヒット商品の種が隠されているという重要な示唆になります。

最近では、製造業の熟練技術者の”匠技”をAIで習得するために、エスノグラフィーの手法が使われるとよく耳にしますね。

ABOUT ME
早稲田大学政治経済学部卒業。 みずほ情報総研株式会社(現みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)、政府系金融機関SI企業勤務を経て、2020年アイトクコンサルティング設立。 ITを活用した業務改善、セキュリティ対策、クラウドサービス導入など中堅・中小企業を中心にIT・経営支援に従事。
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