3月24日の日経新聞に”改革に失敗3つのワナ”と題する記事がありました。
それによるとDX推進に失敗する要因として以下の3点が挙げられています。
- トップの意識が低い、経営トップに戦略がない
- 推進役の能力不足、DX部門のスキル不足
- 事業部門の抵抗、現場を巻き込んだ改革ができない
(※DX;デジタルトランスフォーメーションについての解説はこちらの投稿をご参照ください)
ここに挙げられた3点は、今に始まったことではなく、IT部門の経験が長い方ならわかると思いますが、ずっと昔から言われていることで、決して目新しい内容ではありません。
ですが、裏を返せば、これら3点を克服することが成功の”カギ”ということにもなります。
それではこれら3点を克服するためにIT部門は何をすべきか考えてみたいと思います。
トップの意識が低い、経営トップに戦略がない
ここで言う戦略とは、経営戦略・事業戦略よりワンブレイクダウンしたIT戦略のことであろうと思います。
トップは製造業なら製造の、小売業なら小売りのプロではあってもITのプロではないのがほとんどのケースであろうと思います。
そのトップにIT戦略を示してもらうというのは最初から難しい話です。
そこでIT部門がすべきことはトップから”改革の方向性”を聞き出し、これをITで実現すべき方策を自らが考えることです。
例えば製造業のトップから「DXで利益率を向上させたい」という意識を感じ取ったら、
利益率の向上→原価の低減→歩留まり率の向上→不良率の低下
といった連鎖に分解して、不良率の低下のためにAIで品質評価をするシステム、作業者のスキル向上に役立つeラーニングの導入などと言った方策を考えることになります。
推進役の能力不足、DX部門のスキル不足
社内で必要なノウハウ・技術が不足している場合は、社外からそのリソースを補完することになります。
ITベンダーに委託する、ITコンサルタントに支援してもらうという方法などがありますが、ユーザー対ベンダー、という図式にならないようにまずは自社のユーザーに交じって議論できるようなITコンサルタントを巻き込んで、要件定義を詰めていく作業が必要になります。
その場合、ITを導入すればうまくいくだろうというレベルではなく、不良率を○○%まで低下させる、社内のペーパーを80%なくす、などの定量的な目標も設定します。
なぜ定量的な目標が必要かというと、事後の評価ができないからです。
事後の評価ができなければ、その後の改善も見えてきません。
事業部門の抵抗、現場を巻き込んだ改革ができない
これは私も経験上、必ず直面する課題です。
このようなケースは多くの場合、IT主導で事を進め、後になって事業部門にIT化の話を持ち出す場合がほとんどです。
これは、中小企業よりも部門ごとに独立性の高い大企業で見られがちです。
この対策としては、事業部門のキーパーソンを早期の段階でIT化戦略プロジェクトのメンバーになってもらうことがベストです。
つまり”抵抗勢力”に”主力勢力”となってもらうわけです。
事業部門自身が旗振り役となってもらうことで、抵抗を最小限に抑えます。
抵抗する人は最後までいますが、事業部門を完全に敵に回しては終わりです。
ですが、キーパーソンを味方に付けておけば、その後の社内推進は天地の差です。
以上見てきたように、成功のポイントとして、
- トップから”改革の方向性”を聞き出し、これを分解して方策を講ずること
- 社外リソースを活用して、定量的な目標まで設定すること
- 事業部門のキーパーソンをIT化戦略プロジェクトに参画させること
を成功の3要因と考えます。