日経「私の履歴書」では、今月(2020年9月)アートコーポレーションの寺田千代乃名誉会長の起業時のお話を興味深く、楽しく読まさせていただいています。
アート引越センターの創業時、引越を専門にしている会社はなく、運送会社が片手間にやっている程度だったそうです。
今では当然のサービスのように思いますが、引越用の段ボールが用意されることもありませんでした。
引越中に雨が降っても、荷物に汚いシートを掛けるだけで、寺田さんは「嫌やなあ」と思ったそうです。
当時のアート引越センターはオムロン社の精密機器の運送を受託していたため、アルミ箱車を所有していました。
この箱車を利用すれば、引越の荷物が濡れなくて済む。
住民基本台帳で、市区町村の移動人数も調査します。
企業が経営戦略を考えるときに、市場など外部環境の中での自社のポジションから考えるアプローチと自社の持つ資源という内部環境から考えるアプローチが存在します。
これを表にすると以下のようになります。
ポジショニングビュー | リソース・ベースト・ビュー |
マイケル・ポーターが提唱 | ジェイ・B・バーニーが提唱 |
市場での自社のポジションから考えるアプローチ | 自社が所有する内部資源からアプローチ |
もちろん、どちらも重要な観点であり、両方検討する必要があります。
ここで、アート引越センターの創業時の話を今一度振り返ってみると、自社がアルミ箱車を所有していたという事実があります。
このアルミ箱車はまさしく、アート引越センターの強みであり、この点はリソース・ベースト・ビューと言えると思います。
また引越専門の会社がない状況で、精密機器の運送実績がある同社は、同業他社に較べて大事な家財道具を傷つけず運べる企業であるというポジショニングに立ちます。
更に市区町村の移動人数というデータの検証も行っています。
ポジショニングビューとリソース・ベースト・ビューの観点を行き来しながら、データの裏付けも取るというアート引越センターの戦略は、コロナで営業もままならない多くの中小企業にも参考になる点があると思います。
例えばアシストフックという商品をご存知でしょうか?
電車やバスのつり革に素手で触れることなく掴まるための商品です。
三重県亀山市にあるギルドデザインという会社が開発した商品です。
ギルドデザイン社ホームページより(https://www.gilddesign.com/)
ギルドデザインは金属加工製造業の会社ですが、やはりコロナの影響を受け、受注が減少、そこで、コロナ感染防止を必要とするものが求められているという外部環境、殺菌に優れる銅製品加工技術という自社の強み・内部資源を活かし、アシストフックを世に出します。
結果は大当たりのヒット商品になりました!