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ネット上で悪意のある書き込みをされた 発信者情報開示請求について知っておこう

パリパラリンピック、アーチェリー日本代表の重定知佳選手から東パラリンピック代表選考当時に、ブログに匿名で「代表入りも無理なの気づきませんか?悪あがきもほどほどにした方がいい」、「代表選手になりたいならルールを守るのは最低限のマナーです」などと投稿をしました。

これに対し、名誉を傷つけられたと同じ競技の小野寺朝子選手が訴えた裁判で、東京地方裁判所は重定選手に124万円の賠償を命じました。

小野寺朝子選手側の発信者情報開示請求で重定知佳選手の投稿であることが判明したそうです。

アスリートの世界だけでなく、ネット上の誹謗中傷による被害は日常茶飯事の世の中です。

しかしながら、このような風評被害に役立つのが、プロバイダ責任制限法の発信者情報開示請求制度です。

まず、「プロバイダ責任制限法」とは、インターネットによる情報の流通によって権利の侵害があった場合について、プロバイダ側の損害賠償責任の制限と発信者情報の開示を請求する権利を定めた法律です。

そして「発信者情報開示請求」とは、インターネットによる情報の流通によって自己の権利が侵害されたとする者が、プロバイダに対して、発信者情報の開示を請求することです。

開示を請求できる項目は下表の通りです。

  1. 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の氏名又は名称
  2. 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の住所
  3. 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の電話番号
  4. 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者の電子メールアドレス
  5. 侵害情報の送信に係るIPアドレス(接続元IPアドレス及び接続先IPアドレス)及び当該IPアドレスと組み合わされたポート番号
  6. 侵害情報の送信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
  7. 侵害情報の送信に係るSIMカード識別番号
  8. 5ないし7から侵害情報が送信された年月日及び時刻
  9.  専ら侵害関連通信に係るIPアドレス及び当該IPアドレスと組み合わされたポート番号
  10.  専ら侵害関連通信に係る移動端末設備からのインターネット接続サービス利用者識別符号
  11. 専ら侵害関連通信に係るSIMカード識別番号
  12.  専ら侵害関連通信に係るSMS電話番号
  13. 9ないし 12 から侵害関連通信が行われた年月日及び時刻
  14. 発信者その他侵害情報の送信又は侵害関連通信に係る者についての利用管理符号 

情報開示請求するためには、請求する者の権利が侵害されたことが明白であることが要件になりますが、権利侵害としては、①名誉毀損、プライバシー侵害、②著作権等(著作権及び著作隣接権)侵害、③商標権侵害などが該当します。

発信者情報開示請求については、以下のサイトが参考になります。

違法・有害情報相談センター
(ネット上のトラブル相談も受付けており、よくある質問FAQも参考になります)

プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト
(各種ガイドラインや判例が豊富です。不当な書込みに対する送信防止措置手続に関する情報もあります。)

「プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト」には「発信者情報開示関係ガイドライン」がリリースされており、その中には情報開示請求のための請求書フォームも掲載されていますので、一読をお奨めします。

ABOUT ME
早稲田大学政治経済学部卒業。 みずほ情報総研株式会社(現みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)、政府系金融機関SI企業勤務を経て、2020年アイトクコンサルティング設立。 ITを活用した業務改善、セキュリティ対策、クラウドサービス導入など中堅・中小企業を中心にIT・経営支援に従事。