あるメガネ屋さんのイベントに行った時のことです。
”AIが自分に合ったメガネを選んでくれます”、というキャッチコピーが目に入り、そのブースに足を運んでみました。
店員さんからたくさんの(メガネと関係ない)画像を見せられ、その中から自分の好みの画像や色彩を答えます。
最後に自分に合ったメガネのタイプが表示されます。
なるほどね、という感じでした。
AIが選ぶとのことでしたが、このAIにもいろいろなレベルのものがあります。
- 単純な制御をAIと称しているもの。温度が一定になると冷風に切り替わるエアコンなど。
- 多少複雑な動きにも対応できるもの。お掃除ロボット、将棋のプログラムなど。
- データから機械学習により予測値や分類結果を提供できるもの。
- ディープラーニングを取り入れた画像などの一般物体認識や音声認識もできるもの。
現在”AI”と言っていいレベルのものは、3または4レベルのものかと思います。
AIは実は過去にもブームがありました。1950年代と1980年代です。
1950年代のものは迷路ゲームやチェスなど簡単なゲームを探索して回答を出す”トイ・プロブレム”といわれるものでした。
1980年代のものは”エキスパートシステム”といわれるものです。
エキスパートシステムとはその名前が示す通り、専門家の知識をコンピュータで実現するものです。
例えばMYSINという血液疾患の患者を診察するシステムがこれに該当します。
MYSINは診断医に対して、「血液に感染しているか」、「激しい痛みはあるか」等の質問に「Yes」・「No」で回答して診断を下すシステムです。
ですが、MYSINは医療の現場では使われなかったそうです。
MYSINが判断した診察を誰が責任を持つのかといった問題があったからです。
現在でも、自動運転車が事故を起こした場合に責任を取るのは誰か?
AI、それとも運転席にいた人、あるいはAIの製造者?
依然結論が出ていない問題です。
エキスパートシステムのAIブームが下火になってしまったのは、「Yes」・「No」で答えられる形式知はともかく、ベテラン職人の長年の経験からくる勘のような暗黙知がコンピュータで表現できなかったからです。
そして現代は機械学習やディープラーニングのAIブーム。
今でも上述した責任問題や暗黙知の表現問題は解決したわけではなく、解が存在しない可能性もあるわけですが、それでも特定分野に特化した”弱いAI”として社会に浸透しつつあります。
さて冒頭のメガネ屋さんのAIですが、これはエキスパートシステムではなかったのかなと思います。
そもそも”AI”という言葉の定義も実はまちまちなので、言ったもん勝ちなところもあるのですが、”AI”というワードにすぐ飛びつかず、一口にAIと言ってもいろいろなレベルのものが混在しているということは認識しておきたいところです。