中小企業のためのセキュリティ対策

SNSに潜むロマンス詐欺師のトラップ

中小企業がするべき情報セキュリティ対策

※本稿は東京都中小企業診断士協会発行「SMECA2019年7月号」に私が寄稿した記事を掲載したものです。

1.はじめに

「スマホを落としただけなのに」という小説がある。昨年映画化もされた作品だが、この小説では、スマホを外出先で紛失したことからトラブルに巻き込まれる人間模様が描かれている。スマホは変質者に拾われる。スマホのパスワードは類推・解除され、全ての個人データが搾取されることから物語が始まる。SNSのアカウントが偽造され、友人になりすました連絡が来ることで、クレジットカード情報などの個人情報が徐々に搾取されていくのである。この小説では、スマホの紛失により個人情報を漏えいさせてしまうわけだが、たとえ紛失がなくても、SNS上では、このような不正目的のアプローチは通常起こりうる。例えば、日本国内ではSNSを利用した国際ロマンス詐欺の被害者が最近増加しているようである。被害額が数千万円というケースもあるという。国際ロマンス詐欺とは海外在住の軍人・医師・ジャーナリストなどになりすまし、SNSを通じて近づき、当事者の感情・同情を誘発して、金銭を要求する詐欺の手法である。軍人を語るケースが多いことから、ミリタリー詐欺とも呼ばれる。 

2.不正なアプローチの手法

この国際ロマンス詐欺が私のところにもアプローチしてきた。まずSNSを通じて友達の申請が来る。プロフィールを確認すると、年齢30歳・女性・マイアミ在住・オックスフォード大学卒・USアーミー勤務とある。写真も掲載されている。最近アカウントを開設したらしく、他に友達の登録はない。友達の申請を承諾すると、別のメッセージ系アプリに誘導され、すぐに会話が始まる。最初に連絡してきたSNSのアカウントはすぐに閉鎖される。メッセージ系アプリの会話では、離婚歴があり、現在はシリアの部隊に派遣されているという身の上話を披露する。やがて「休暇を取得して日本に行きたい」と言い出す。私はここで連絡を取るのをやめてしまったが、詐欺に遭うケースでは、この後、渡航費用やその支度金などを求める。実は最初に友達申請が来た2日後に、今度は男性から友達申請が来た。男女の違いはあるが、やはりUSアーミー勤務で、シリア駐在とのことであった。 

3.SNSで被害に遭わないために

この国際ロマンス詐欺にはいくつかの特徴が観察されるようである。まず1点目は、SNSを通じて友達の申請からアプローチが開始されることであるが、そのアカウントはいつでも閉鎖できるように友達などの情報はほとんど掲載されていない。2点目は、米国人と称する割には英語が拙いことである。いくらスマホアプリ上での会話とは言え、日本人でも気付くような初歩的な文法ミスがすぐに目に付く。3点目は、軍人・軍医など軍関係の職業を騙るケースが多いことである。一般人が知らない軍隊組織特有の退役・休暇手続きが必要であることをちらつかせ、金銭取得の手段に利用することが一つの理由と考えられる。

一面識もない米国軍人が、見ず知らずの日本人と友達になりたい、日本まで会いに行きたいと連絡を寄越す可能性が果たしてどれくらいあるだろうか。冷静に考えれば、多くのケースは未然に防げるはずである。

 

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ABOUT ME
早稲田大学政治経済学部卒業。 みずほ情報総研株式会社(現みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社)、政府系金融機関SI企業勤務を経て、2020年アイトクコンサルティング設立。 ITを活用した業務改善、セキュリティ対策、クラウドサービス導入など中堅・中小企業を中心にIT・経営支援に従事。
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